料理に使う水やお茶やコーヒーなど、直接体内に取り入れるお水なら、きれいで美味しい水でありたいと自然と願うもの。
特に都市型の生活では水道水を使わないということは考えられないけれど、でももっと安全でおいしい水を使いたいと思ってミネラルウォーターやサーバーを導入することもあるでしょう。
でも、日常生活全体をまかなうレベルで天然水やピュアウォーターを買うというのは、コスト的にも環境的にもエレガントじゃない。行政、国レベルで培ってきた水道システムを享受しないというのもまた、無駄というもの。
地元の名水を汲んでくるのも良いけれど大変だし、上流の美しいせせらぎからお水をいただくというのも都市型の生活では現実的ではないし、これらの天然水の安全性が担保されていないのも現実。なぜなら文明の工業化や特に農業の工業化によって地下水や地球の水の循環自体が汚染されているから。
スーパーで手軽に買えるミネラルウォーターにも同じことが言えるし、ウォーターマイレージも無視できない環境負荷となっています。
もちろん、水道水にもカルキと呼ばれる塩素をはじめとした様々な化学物質が混入していて(定められた基準値内ではありますが)、人体に良い水とは言えないのも現実なわけです。
それでも、美しい地球を取り戻すまでの妥協案として、水道水のポテンシャルを最大限に引き上げることを考えた方がナチュラルだし負担が少ないという思いに落ち着きました。
最もオーソドックスで、昔からの知恵として暮らしの中にあった炭を使った自然的な水の浄化方法やメンテナンス、ポイントを紹介していきます。炭を使った浄水は水が美味しくなるという点が最大の魅力で、高価な浄水器などではなく、誰もが無理なく取り入れられる方法と言えます。
また浄水だけではなく炭の様々な効果をまとめたのでチェックしてみてください。使い古した備長炭なども有効活用できるようになります。
炭の水道水に対する期待できる主な効果
- 炭の多孔質構造がフィルターとして機能し、水道水に含まれる塩素や化学物質を吸着して取り除き、臭みのない美味しい水に変えてくれる。
- 炭はph9のアルカリ性を示し、カルシウム・マグネシウム・カリウムなどのミネラル要素が多く含まれているため溶け出して、まろやかなミネラルウォーターに変化し、アルカリイオン水にしてくれる。
主にこの2つの効果が期待できることが昔から知られていて、水を浄化するアナログな方法としてオーソドックスに行われてきました。
多孔質の構造を深堀すると穴の表面積は炭1gあたり、300平方メートルもあると言われていて、吸着力が期待できる要素が圧倒的に高いことが理解できます。また、この小さな穴には有用な微生物が住み着き、不純物を分解し”生きた”水に近づけることができると言えます。水道水を蘇らせるといったら大げさかもしれないですが、炭には解明しきれない不思議な力があると認識している研究者もいるほどです。
用意するもの
- 木炭(備長炭)
- ピッチャーやガラスジャー、水筒など
- 水道水
木炭
水一リットルに対して100g程度が目安です。
ピッチャーやガラスジャー、水筒など
1ℓ程度のものから大容量のものまで。たくさんの水を浄水できるので大きめのピッチャーは重宝します。
水道水
簡易的な浄水器を通したものはより炭の浄水能力が発揮されます。また、40度程度の温度でカルキが粗方抜けていくので、注ぐときはぬるま湯程度を使うと浄水が早くできることもポイントのひとつ。
工程の例(炭のメンテナンス)
木炭(備長炭)を洗浄する
煮沸する
天日で干す
ピッチャーやガラスジャーに備長炭を入れる
水道水を注いだら準備完了
一晩おけば弱アルカリのまろやかな美味しいミネラルウィーターに
カラフェやピッチャーに移したりしながら、笠が減ってきたらまた水を注いで浄水するを繰り返していきます。自分なりのサイクルで。
木炭(備長炭)のメンテナンス
炭の効果のポテンシャルを最大限に保つために必要なメンテナンスとして、定期的にしっかりと洗い、煮沸消毒して乾かすということが大切です。
洗う際には野菜を洗うためのたわしなど、洗剤を用いないツールを一つ設定してそれを使うことが大切です。炭の多孔質構造(小さな穴)を洗剤の化学物質がふさいでしまい、効果が半減してしまうためです。
メンテナンスの頻度の参考としては、理想は週に1度、最低限2週に一度は行うと良いです。これは炭の効果の有効期限と合わせて確認しておきたいことです。
また、メンテナンスのローテーションをエレガントに維持するためにも、使える状態にメンテナンス(洗って、煮沸、乾燥)した炭を複数準備して、密閉容器などに保存しておくとスムーズです。
木炭の効果の有効期限
不純な化学物質を取り除く浄水機能自体は、どれだけ使ってもしっかりとメンテナンスを行えば失われないということは前提として言えますが、炭自体も劣化していくので何年も同じ炭を使い続けるというのは得策ではありません。3か月から6か月で取りかえることが推奨されます。
それとは反対にミネラルが溶け出す効果というのは10日~14日程度で失われてしまうと言われているので、ミネラル補給を目的とする場合は2週間を目安に取り換えるのが良いでしょう。ライフスタイルに合わせて適宜対応していきます。
いろいろな効果が期待できる木炭(備長炭)
ごはんを美味しく
研いだお米と一緒に備長炭を入れて炊くと、カルキ臭はもちろんヌカ臭も取り除きとても美味しいご飯に炊きあがります。
お酒をまろやかに
日本酒や蒸留酒、ウイスキーなどももちろん炭(備長炭や竹炭)を入れておくとまるで魔法のように美味しくなることが知られています。
また、ビールを注ぐ際にコップに炭(小さな竹炭など)を入れておくと泡がまろやかになってなめらかなのどごしが美味しさを引き出してくれるなんてことも。
※炭を入れた状態で長期保存は効果が半減するので、1週間程度で取り除くようにしましょう。
入浴剤として
お風呂に入れた状態で沸かすと、遠赤外線放射により温熱効果も高まることが知られ、体の芯まで温まる入浴ができます。また、お湯がまろやかになり素肌へのあたりが優しくなるのが実感できます。
除湿、消臭
押し入れやトイレ、納戸など匂いや湿気がこもりやすい場所に置いておくと、除湿消臭効果が期待できます。使い古した備長炭などを捨てずに有効活用できます。
冷蔵庫に
冷蔵庫などに入れておくと、除湿消臭効果はもちろんのこと野菜や果物が劣化する原因のエチレンガスを吸着し鮮度を長く保ってくれると言われています。使い古した備長炭などを捨てずに有効活用できます。
マイナスイオン効果
炭はマイナスイオンを発することが知られています。鎮静効果や癒し効果の高いマイナスイオンが副交感神経を刺激しリラックスした状態をサポート。リビングやベッドの傍などにおいておくとより安眠効果やリラックス効果を高める相乗効果が期待できます。
空気の安定
現代の居住空間は電子機や家電などの影響によりプラスイオンが大量に発生しています。これらを中和し、室内の空気の健全性を保つ役割も期待できるとされています。室内の4隅に置くと良いようです。
また、炭は電導性が高く有害な電磁波の遮蔽効果があるとも言われ研究が進んでいることも見逃せない要素です。
園芸などに
使い古した備長炭などを捨てずに有効活用する方法として最も最適な使い方と言えます。炭を細かく砕いて土などに蒔いておけば、通気性や微生物の活性化を促す土壌改良効果があります。炭は土壌のphを安定させる効果が高いので酸性に傾いてしまった古い土の再生に活躍します。
木炭の種類と竹炭の特徴を知って使い分ける
木炭は大きく分けて、「白炭」と「黒炭」に分けられます。
白炭とは
炭火焼など高級料理にも使われるのがこの白炭で備長炭はこちらに分類されます。着火はしにくいですが火持ちが良く、美味しく焼けるのもこちらのタイプ。
樫などの硬い木を1,000度以上の高温で焼いた炭で、叩くと金属音のような音を出すほどに硬質で滑らかなのが特徴的です。
硬質のため砕けにくく、浄水用などには備長炭が適しています。消臭、除湿などの効果もありますが、黒炭よりも若干劣ると言われています。
ただ、酸性の物質の吸着に優れているので、タバコ臭、生ごみ臭、冷蔵庫や生活臭には「白炭」備長炭の方が効果を発揮します。
黒炭とは
燃料用に使われることが多い木炭で、白炭よりも着火しやすいため若干火持ちは短めですが、囲炉裏、火鉢などで重宝するタイプです。
クヌギ・コナラなどの原木を400~700度で焼いた炭で、凹凸の多い割れた断面と、やわらかく表面積が広いのが特徴です。
柔らかく砕けやすいため口に入るタイプの用途(浄水、炭湯)などには適しているとは言えないですが、脱臭、除湿などではその特性上、白炭(備長炭)よりも効果が高く適していると言われています。アルカリ性の物質の吸着が得意なのでトイレの消臭には黒炭が活躍します。
竹炭
竹炭も同様に浄水機能に優れています。木炭よりも薄く、硬質なのも特徴です。キレイに炭化させるためには木炭よりも条件と手間が多く、コストは木炭よりもやや高額になります。
炭火や燃料としては木炭には適いませんが、木炭より小さくても竹炭のほうが穴の径が小さいので、表面積が多くなり不純物の吸着力が高くなります。ミネラル(珪酸・カリウム・カルシウム)も木炭より多く含まれた状態で炭化するため、浄水やミネラルウォーターにしてくれる力も木炭より高いです。
なので、出かける際に持ち運ぶような小さな水筒などに入れて浄水する用などに使い分けて、個人的には竹炭も使っています。
ビジュアル的にもエレガントで小ぶりなので、トイレの消臭兼インテリアや枕元に置いておくにも重宝します。
食料輸送の環境への負荷を量と距離から算出して数値化したフードマイレージという指標があります。輸送に伴うエネルギーをどれだけ使っているかということ。
これが高いと環境負荷が高いということで、シンプルに言うと地元の食材を使うということが一番環境負荷が低く、外国産の食材は高くなるということになります。
その概念の水バージョンがウォーターマイレージです。地元の水を使うということが環境負荷が低くなるという、もっともで当たり前のことです。
要するにミネラルウォーターを買うにしても、外国産の天然水はものすごくウォーターマイレージ高くて環境負荷が高いので、国産のものを購入するようにすることを意識することが環境を意識することにつながるということが言えます。
水資源が豊富なはずなのに、日本は年間消費量の約5分の1、約50万キロリットルものミネラルウォーターを海外から輸入しているという現実があって、とても環境負荷が高くなってしまっています。
手軽に買えるものなので意識しないことも多いかもしれないですが、些細なことを意識することが実は環境改善には重要であるという要素も無視せずに知っておきたいことです。
水道水を浄水して使うということは、もちろんミネラルウォーターではないにしても、ミネラルウォーターを買うよりもはるかに環境負荷が低くなります。