植物が健全に育っていくには、土の酸度に意識を向ける必要があります。土には酸性であるのか、アルカリ性であるのかという性質を帯びていくのですが、気候条件や肥料成分、または植物によって変化します。
培養土を購入し、植物を育て始めた初期の段階ではそれほど考える必要もないですが、長期的に園芸を楽しんでいくならば、いずれ気にする必要が出てきます。このエントリーでは、基本的な土の酸度調整の方法や確認、また知っておきたいことをまとめています。
そもそもなぜ土の酸度を無視できないのか。
植物には様々な性質をもつものが多種多様に存在しています。それらの性質を考慮した場合、土の酸度によってその植物自体の生育の良しあしが決まるものがあります。植物を育てている以上、その植物が最大限輝けるように見守ってあげたいと同時に、最大限の魅力を引き出してあげるためには土の酸度を気にしてあげるタイミングが必ずやってくるのです。
日本の場合、雨の多い気候がら土は弱酸性から酸性である場合が多く、それらの土に適した植物が自生しています。逆に、ヨーロッパなどは地中海性気候と言う特徴から比較的雨が少なく、土が弱アルカリ性であることが多く、そこでもまた、その土に適した植物が自生しているわけです。ハーブ類に代表されるような植物ですね。
現在は原産地が様々なものが流通し、楽しめるようになっているため原産地の土の酸度を再現する必要性が出てくる植物も多くあることになります。
植物自体が好む土の酸度を無視してしまうと、栄養分の吸収を阻害させ、生育が悪くなるばかりではなく、場合によっては育たないか枯れてしまうということも起こります。基本的にほとんどの植物が好む土の酸度は弱酸性から中性と言えます。アルカリを好む場合でも、ほぼ弱アルカリ性程度です。
土の酸度を確認するタイミング
お庭造りの初期の段階での土づくりや、新しく鉢植えを行う場合、また植え替えの時期や大規模なお手入れをするタイミングで酸度を確認することが多くなるはずです。また、作物をワンシーズン作り終えると、ほとんどの場合は、土は酸性に傾いている場合が多いので作付の際の畑づくりにおいても確認することになります。
野菜作り二年目からとか、多年草や宿根草の育ちが二年目以降に悪くなっている場合は、土の酸度が傾いていることが原因の一つになっている場合があります。
特に中性から弱アルカリ性を好むハーブ類を日本で育てたい場合は必須になりますし、定番の野菜であるホウレンソウなどの野菜類の中にも弱アルカリ性を好むものがあるので、育てようとしている作物や植物を調べて土の酸度を適宜確認する必要性が出てきます。
鉢植えの場合は、植物に最適化された土が流通しているので、初期の頃はそれらを使えば失敗はありませんが、規模が大きくなる露地や植え替えの時期、また古い土を再生して使う場合などは酸度を確認し、場合によっては弱アルカリに近づけた土に調整する必要があります。
土の酸度を確認するために便利なツールもありますので、それらをひとつ持っておくとスムーズです。
水素イオン指数、いわゆるpHと呼ばれますが、数値としては0~14であらわされています。中性が7、この数値をラインとして低ければより酸性であることを示し、高ければアルカリ性であることを示します。
大体、数値としては5.5~7.5程度がおおよその植物をカバーする範囲です。なので、ほぼ中性よりですね。pH14とか、pH0なんてことはないので、このあたりの数値を意識しておけばとりあえずOKです。
日本の気候での露地栽培はほとんどの場合は土はやがて酸性度を高めていきます。多くは降雨によって土の石灰分が流れたり、雨自体が弱酸性であることもあります。特に化成肥料を主に使っている場合などは間違いなく、酸性に傾ているはずです。植物自体にも生育過程で土を酸性にしていく性質があることも知っておきましょう。
ただ、中には日本原産の植物や、ツツジ科に代表されるような植物(ブルーベリーやクランベリーなど)は、弱酸性と言うよりは酸性度が高い土を好むものもあるので、中性から弱アルカリ性に調整するだけはなく、逆に酸性度を高める土壌改良を行う場合もあります。
植物に応じての対応になりますが、ここでは基本的に、酸性に傾いてしまった土を弱酸性から弱アルカリ性に改善することを目的とした工程を記しています。
酸性質の土を中性から弱アルカリに改善するための工程と改良資材
酸性質に傾いてしまった土の酸度を調整するために行う工程としては、改良資材を混ぜることがあげられます。これらの改良資材を混ぜることによって土の酸度を目的にあった植物に適応させていきます。
上記でも記した通り、酸度を確認して目的に応じて改良資材を施すのですが、もちろん規定量と言うものがありますし、施す必要がないという場合もあります。なのでより確認しやすいようにツールで計れるようにしておくのが良いです。基本的には植える前に土壌改良をして土を最適化しておきます。
改良資材として使えるものとしては、消石灰、苦土石灰、有機石灰、草木灰などがあります。それぞれの特徴や注意点を順に記します。
基本的にはどの資材を使う場合でも、入手したもののパッケージの記載を確認し、規定量を厳守します。少ない分にはある程度改善が後々できますが、強アルカリに傾いてしまうと、弱酸性に戻すには時間がかかり手間になってしまいます。
苦土石灰
- ドロマイトという鉱物を原料に、燃焼粉砕して作られる資材。苦土(マグネシウム)が含まれ、アルカリが50%以上である。
- 使うタイミングは植え付けの4~5日前でも施すことができる。
- 少量では効き目が弱いが、逆に安全性が高い。
家庭園芸や小規模な農園でも使いやすい改良資材です。一般的には苦土石灰が使用する敷居が低いと言えます。園芸初心者から生産農家まで幅広く使われています。気軽に使用できる酸度調整材としては一番よく使用されている一般的なものです。コストパフォーマンスと安全性のバランスが良いと言えます。
目安としては、土1リットルに対して3~5g程度(小さじ1弱程度)が適量とされます。庭や畑などの露地で使用する場合は1㎡あたり、100g~200g程度を混ぜ込みます。これは目安なので、これで目的に沿った植物の酸度に土がなるとは限らないです。数値としては大体0.5~1程度調整されるようです。
目指す土の酸度が弱酸性なのか、中性なのか、弱アルカリなのかによって量が変わるので、植物が求めるpHをリサーチして確認します。場合によっては、複数回、または下記に示す有機石灰や草木灰を使用することを見越してこの段階ではこの程度にとどめておくという判断もあるでしょう。
注意点としては、肥料を施すと同時に使用しないことです。元肥として肥料を含ませることがあると思いますが、その場合は先に苦土石灰を施して改良してから、1週間~2週間ほどずらして肥料を施すようにしないと、窒素成分と化学反応を急激に発生させて、悪臭(アンモニア臭)が発生する場合があります。
消石灰
- カルシムが含まれていて、アルカリ分65%以上である。
- 使うタイミングは植え付けの2週間以上前に施すことが基本である。
- 少ない量で効き目が圧倒的であるが毒性が強い。
消石灰は畑などの大規模農場、市場を意識した生産、つまり農家さんが使うことが主流で家庭園芸で使用することは稀です。毒性も強く、土壌の微生物を減少させてしまうことがあります。
注意しなければならないのは、土が固まりやすくなり根の成長を阻害する場合があるので、多量に使用することは避け、規定量は必ず守るようにすること。(苦土石灰の8割ほどの量が基本とされます。)
また、苦土石灰と同じように、肥料分と急激な化学反応を起こして悪臭を発生させてしまうので、こちらも元肥を混ぜる際は先に消石灰を施して改良してから、1週間から~2週間ほどずらして肥料を混ぜ込みます。
また、皮膚に触れると炎症を起こして荒れてしまうくらいにアルカリ度も強く、目に入ると失明の危険性があるともいわれるくらい毒性も強いので、小さな菜園やパーソナルな農園などではあえて使用する必要性がないと言えるので参考程度に。気軽に園芸を楽しみたい場合は使う必要性はないです。
有機石灰
- 牡蠣殻やサンゴの化石などを原料としたミネラル分も豊富な有機資材
- 使うタイミングとしては植え付ける直前でも、生育中でも、その都度使える。
- 効き目がとても緩やかで、使う量がアバウトでも害が起こりにくい。
酸度調整力としては即効性がなく、ゆっくりと分解されながら効く印象なので、土が酸性に傾くのを防止することを目的に、植物植え付け時から生育中に土の上に撒いたり混ぜ込んでいくという使い方をしても不安がありません。ズボラに適当に気軽に、と考えるならば、有機石灰は選択肢として上位に上がります。
ほんとに優しいアルカリ改良資材と言えるので、常備しておくと重宝します。少々粗目で砕かれているものから、粉上に細かくされているものまであります。
貝殻やサンゴの化石などが原料になっていて、ミネラル分も多いのでグレードが高い健康的な作物の収穫につながります。
草木灰
- 木や葉を燃やしてできる灰で、カリが含まれるので、根肥えと呼ばれる有機肥料の一つ
- 使うタイミングとしては、土に混ぜ込んで元肥としたり、生育の初期段階で使う。
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- 効き目は比較的即効性があるが、少量ずつ様子を見ながら使うといった感じ。
草木灰の場合は根の成長を助けるカリを中心とした有機肥料ですが、アルカリの性質をもつので土の酸度調整に使用することもできます。酸度調整として主に使うというより補助的な位置づけが良いのかなと思います。
植物は根がしっかりと生育すると、そのあとの育ちが勢いを増すので、苗を植え付けた初期段階の頃に追肥として少量施しておくと、土が酸性に傾くのを防止しながら根の成長を促せるので一石二鳥ですし、根菜類(ジャガイモ、ニンジンなど)などにとっては重要な肥料となります。
他にももみ殻などから作られる燻炭などもアルカリ性の性質を持つ改良資材と言えます。通気性などの向上も促せるので、知っておくと代用できます。
まとめ
上記で記した資材をタイミングによっては複数使うこともあると思いますが、そうすると土が今度はアルカリ性に傾きすぎてしまう恐れがあるので、使う際はその都度酸度を計って対応するようにします。
アルカリ性に傾きすぎてしまう弊害として、微量要素であるマグネシウム、鉄などのミネラルの吸収が阻害されると言われています。これらは不足すると病気の原因になったりするので、重要な要素です。土壌改良によってpHを調整する場合は、アルカリ性に偏りすぎないことも意識しましょう。
基本的には入手した資材の記載や説明書通りの規定量を土に混ぜ込むだけで酸度調整できるので難しいことは特にありません。後は経験によって慣れていきます。主な酸度調整資材としては、苦土石灰を基本としておくとよいと思います。
有機石灰や燻炭などは、仮に多く入れてしまっても土がアルカリ性に偏ることはなく、絶妙なラインで土を安定させてくれる性質があります。
なので、規模が小さい、鉢植えで管理してる、微量要素を与える目的も兼ねる、また、自信がない場合や植え替えるタイミングを逃してしまったとか、そんな時は、燻炭や有機石灰を追肥する要領で土の上に適量、施すといいと思います。
土の酸度を最適化して健全に植物が美しく育っていける土壌環境を作っていきましょう♪