「こんにちは、ちょっとスズメのひながここにいてね・・・」おもむろに話しかけてきた真っ白な髭を蓄えた男性。
たまたま、家を出て道を歩いている時、初老の男性が立ち止まって道端の生け垣の茂みをみつめているのに気がつきました。私は普通に通り過ぎようとしたときに、そんな風にその方は声をかけてきたのでした。
私はその人に対して何も知らないけれど、根拠のない安心感と穏やかな空気間に自然とその会話に導かれていきました。
自然と笑顔になれるというか、ほっとしてしまうようなオーラに敬意を表さずにはいられない感覚と、どこか馴染みのある懐かしさに包まれたのでした。自分の中にある優しさみたいなものがどんどん溢れてくるような感覚はまるで自分自身を癒しているような感覚にも似ていて。
その方は、
よく早朝に何度か見かけたことがあって、とても不思議なオーラをまとっている方だなと感じていた人だったのです。
真っ白な正にサンタクロースのような長い髭を蓄えていて、とても不思議な人なのです。近くで焼き芋屋さんをやっているのは最近知った事実。
どうやら、スズメのひながその生け垣の茂みにある木から落ちてしまった様子。巣には戻れず、茂みをさまよっているのだそう。
ひな鳥の親は定期的に餌を運んで、そのひな鳥に与えている姿があると言っていました。なので食べ物には心配ない。でも、たまに道路に出ているときがあって、心配だからこうしてたまに見に来ているというお話でした。
忙しい日々や、余裕のない日々ではきっと気づくこともできないような自然の中の営み。通り過ぎてしまう中に存在する、彼らなりの必死な営みが見えた気がしました。
たくさんの動物たちの営みが、側にきっと散らばっているんだなって改めて感じたのです。
心が温かくなって、なんだか嬉しくなって、その日は一日中不思議な幸福感に包まれて過ごすことができたんです。
そういう小さな自然の中で起きている様々に気づけるような生き方をしたいなって思わせる出会いでした。ゆったりと生きる方法にきっと正解はないのだけれど、
心が乱される現実のいろいろを包み込めるような、そんなあり方を見つめるきっかけをくれました。
美しい真っ白な髭と髪と眉をもつあの人…。
仙人なんじゃないかと思ってしまうような、すごく心地の良いエネルギーを放つその方に感謝です。とても素敵な方でした。そしてなんだかワクワクしたのです。
雑踏にまぎれていると気づけないことがたくさんあって、でも、気づけなくてもそこに存在していて影響し合っていることは確かなんだよねって。
その小さな小さな自然の中のディティールを見つけてみようと意識を研ぎ澄ませて過ごしているとインスピレーションも湧いてきたりします。そんな風に過ごせたら幸せを感じやすくなるのかもしれません。
課題が山積みでも、そうやって心の余裕を、うーん、余裕というか、余裕がない時でも自分の世界だけにとらわれないように自ら意識をずらすというのはとても大切ですよね。広げるというか。
その物理的なヒントは、もっと自然と自然に関われるような状況を作り出せるかどうかなのかなと感じたりしています。
あくまでも自然に。自然とね。